出版物やWebメディアに関して、「薬事法チェック」は非常に重要です。年々、記事内容について薬事法を徹底的にチェックするメディアは増えてきています。一方で、薬事法そのものを深く理解していない人もいるのではないでしょうか。
この記事では、薬事法チェックの意味や理由、実際にチェックするときの注意点などを解説します。
薬事法とは旧名であり、正式には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。略して、「薬機法」と呼ばれることが一般的です。平成26年に「薬事法等の一部を改正する法律」が施行され、区別するために「薬機法」という略称が定着しました。
ただ、文章の内容を確認する際には、引き続き「薬事法チェック」と呼ぶ機会が少なくありません。薬機法や薬事法が取り締まってきたのは、いわゆる「医薬品」や「医薬部外品」などです。医療目的で作られ、人体に強い影響を及ぼすものが医薬品です。
それに対して、人体への影響が緩和なものは医薬部外品と呼ばれてきました。さらに、薬事法では毒薬や劇薬、化粧品、医療機器についての項目も盛り込まれています。薬事法ではこれらの製品について明確な定義を設定しています。
そのため、医薬部外品を医薬品と称して、販売することはできません。一般人が毒薬や劇薬を取り扱うことも禁じられています。消費者が安全に医薬品や医薬部外品を服用し、不利益を被らないよう、薬事法は大切な役割を果たしてきました。
文章を校正するときのプロセスである「薬事法チェック」では、記載内容が薬事法に抵触していないかを見直します。たとえば、医薬品を医薬部外品として扱ったり、その逆を書いていたりしないかが、校正者によってチェックされていきます。
そのほか、医薬品や医薬部外品の効用を過剰に宣伝するのも、薬事法違反だといえるでしょう。薬事法チェックでは、そのような描写がないかを細かく調べられます。薬事法チェックでは、コンプライアンスへの適合も重要視されてきました。
以前は「この薬を飲んだら健康になった」といった書き方が通用していた時期もあります。しかし、「薬を飲んだこと」と「健康になったこと」の間の因果関係は完璧に証明しづらい事象です。そこで、「薬を購入した。やがて、体調で心配に思うことがなくなっていった」のように、因果関係をぼかした書き方にするケースも多くなってきました。
こうした文章が増えてきたのも、多くの記事で薬事法チェックがなされている結果です。
なぜ薬事法チェックを慎重に行う媒体が増えたのかといえば、実際に違反してしまった事例が続出したからです。たとえば、キシリトール入りのガムが「歯の再石灰化を促進する」という新聞広告を掲載したことで、問題になった例があります。
ガムは医薬品ではなく、本来は細胞や内臓の働きを促進する効果はありません。「再石灰化を促進」という文言は効能の表示になるとして、広告は取り下げられました。また、コラーゲン入り食品の宣伝文句だった「軟骨に柔軟性がなくなると痛みを感じやすくなります」というフレーズも問題視されています。
医薬品でない食品の宣伝で、予防効果を暗示していると判断されてしまったからです。さらに、薬事法違反が発覚して、記事を取り下げたメディアもありました。このような違反事例は膨大に存在しています。そして、いずれのケースでも、広告や記事にかけた費用が無駄になってしまったといえるでしょう。
それだけではなく、企業やメディアの社会的信用は失墜し、ブランドイメージは損なわれます。企業が消費者に見放されないためにも、薬事法チェックは肝心なのです。
→薬事法に注意をしながら商品を宣伝をするにはどんな方法があるのだろう
よくある薬事法違反に、「効能効果の記載」があります。医薬品でないにもかかわらず、効能効果を記載するのは薬事法違反です。そのため、「治る」「よくなる」「回復する」などのフレーズは要注意だといえるでしょう。
次に、「促進や増強の暗示」も薬事法チェックでは欠かせないポイントです。
身体組織の促進や増強を目的にしているかのような表記は、薬事法に抵触する危険が少なくありません。「増やす」「整える」「強くする」などのフレーズには気をつけましょう。さらに、「この商品を飲んだから、体がよくなった」といった書き方も厳禁です。
直接的な書き方でなくても、効能を暗示しているだけで問題視されかねません。「健康になろう」「目は大切!」といった、健康に関するフレーズを盛り込む際にも薬事法と照らし合わせなくてはなりません。こうしたフレーズがあるというだけで、薬事法では「商品と関連付けている」と解釈されてしまいます。
「タンパク質は体を作ります」のような文章を書いただけでも、文脈次第では「効能を匂わせている」と判断されるのです。そのほかでは、「世界初」「史上最高」「日本一」といった、根拠のないおおげさな表現も違反のリスクが高いでしょう。
専門家でない人間が文章を校正しても、薬事法違反をしっかり見つけられるかは未知数です。
そこで、多くの企業や媒体が、コンサルタントに薬事法チェックを依頼しています。法律のコンサルタントはもちろん、薬事法に特化した組織もあります。コンサルタントは法律に精通しており、わずかでも違反の可能性があるフレーズを、洗い出すことが可能です。
そのうえで、「このように変えたら問題ない」という提案まで行ってくれます。ほかには、チェックツールを使用するのもひとつの方法でしょう。薬事法専用のチェックツールは、文章の危険なポイントに警鐘を鳴らします。
法律の素人でも簡単にチェックできるのはツールのメリットです。そのかわり、チェックツールは複雑な文脈まで解析できないケースが少なくありません。また、突飛なフレーズもチェックツールをすり抜けてしまう恐れが出てきます。
チェックツールだけに頼らず、必ず人間の目も通すことが理想です。
医薬品や医薬部外品だけが薬事法チェックの対象ではありません。食品や飲料、化粧品も薬事法の対象です。これらについて書かれた文章、キャッチコピーを世間に発表するなら、必ず薬事法チェックを行いましょう。薬事法に抵触してしまうと、多くの人の労力が無駄になりかねません。
可能なら、法律のコンサルタントに見てもらうのが得策です。